忘却の味

忘却の味
ほんのすこし前まで、
わたしはある人に会いたい欲求でみたされていて、その欲求はまず満たされるものではないから、ずっとぐずぐずとくすぶっていた。

会いたくて会いたくて仕方なくて、でも会えない。私の欲求不満は殆ど飢餓感だった。

人の中にいるとその飢餓感は一層強くなって、もっともっと会いたくなった。止まらなかったし、褪せなかった。

たくさんのひとがいるのに、その人がいないことが許せないような、そんな気さえした。

今も私の飢えは変わらずじりじりしているけれど、それもずっと少なくなった。


何かかわりのもので、お腹いっぱいなわけでもないのに。

name
email
url
comment