君の背中

君の背中
あなたのわざと倒れこんできた背中を両の手で受け止めながら

その温かさや、重みや、厚さや、骨の感触や見えないあなたの視線を感じながら、よくわからない笑みがわいて、喉元までせりあがる泣きそうな感覚に戸惑った

どうして、と思った

隣に座ったあなたの、ときどきあたる膝や手に、こわばらない振りをした 左側が落ち着かなくて立ち上がった

どうしたの、と大きな声で何度も呼んで、だめだよ、あの子は特別だからね、と嘘っぽく話した

へらへらしながら、強いちからで手を引いた

どうして、と思った
絶対に飛び込まない
絶対に甘えない
絶対にあなたの前で泣かない

腕を笑いながらほどいて、
寂しさで気道を塞ぎながら、
もう、いいんだ、と思った


私の知っていた背中より薄い
私の知っていた声より高い
だけど、ちゃんと愛しかった
心臓が痛かった

もう、いいんだ
ちゃんと終わったんだ

もう、君を探さないよ

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