指先の自惚れ

指先の自惚れ
その指に触れるたびあなたがどこにもいないのが分かるよ

どんなに隣にいることを許してくれても背中の後ろを分けてくれても

その目はわたしを掠めているだけみたいだ


触れた指先からどろりと溶けて
あなたの深いところまで落ちていく

そんな自惚れを、欲しがっている


笑ってあるいてゆくところよりも、泣いているところが見たいんだ

泣けばいい、っていつも思うよ
泣けばいいのに
どんなに情けなくて、格好わるくても

隣で笑われるよりずっといい


その掌を分けて
足りないんじゃない欲しいものが違うんだ

触りたいのはてのひらじゃないんだよ

泣けばいいのに
わたしの隣で 泣けばいい

そうやって傲慢を振りかざしてから、

わたしはまたその指先を追いかける

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