知っていた背中の

知っていた背中の
さよならをしなかったのは、出会いもしなかったからだ、と思った

あのとき、喉が震えたら、
あのとき、手が伸びたなら、
あのとき、もう少し近くにいたら


思わずにはいられないけど、偶像に似た思い出が美しいことをよく知っていた


だけど、誰かに告げたい思いがあることを私は知らなかった


たぶん、この道を歩く限り、思いは最後まで私の左耳を貫通する

いつか消えてなくすには少し難しい距離があいてしまった


背中ばかり覚えている

わたしの、いちばん好きな背中、だ。
いちばん、忘れたくない背中なんだよ

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