夏の海岸

うつくしい、と思うことにぼくたちは慣れていて
それと同じくらい多くの言葉に慣れている

深海、沈黙、

静寂というのが無音ではないのと同じで ぼくたちは泣いている
海の冷たさに憧れながら そのぬるさに驚いたり 夕方には潮風を呪う

ぺた、ぺた、と歩くごとに
孤独ごと歩いている気がする
パチパチいう夜の街灯は 本当は優しくもない

深夜、瞑目

髪がなびく感覚をぼくは知らない
風の吹くことは知っているけれど

幾度、何度

うつくしい、と口にすることに
ぼくは躊躇わない
そういう嘘を 繰り返して

それでもきみの言葉が かけがえないのだと 伝えるために いきている

いきている

_

送りそびれたラブレターに意味はあるのか。ないのか。
知らん。

送りそびれたことも、送らなかったことも、送ったこともある。

受け取った人が決めることだけれど、
送る人が決めることでもある。

そして私はいつか死ぬから、送っておけ、と自分に言うようにしている。
自分にだけ。

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