サバンナ

「キリンだ」

とコンビニの前で君が言うから、何のことかと思ったけれど。
雨が降り始めて、ひび割れたアスファルトにほんの少し染みこんだ雨粒が多角形の染みをいくつも作っていた。
「キリンと、同じもよう」
ビニール傘の柄を肩でくるり、と弄んで、俯きながら、もう一度君がゆっくりと繰り返す。明るい茶色の髪の向こうで、長い睫毛に縁取られた黒い瞳が、その模様を見ていた。
「ここは、サバンナじゃないよ」
そう返事をした。
そうだねと、言えばよかった。
サバンナじゃないけれど、例えば動物園にキリンはいる。そう言ってしまえばキリンの存在の現実感など、安っぽいものだ。だったら地面にできた模様が何に似ていたっていい。それでもそのとき僕は頷けなかった。
「雨がキリンを呼ぶことくらい、あるよ、」
サバンナじゃなくたって。セブンイレブンの前でだって。キリンは別にどこにいたっていい。そう君は続けた。

僕はそれにも頷けずに、適当に透明なビニール傘から君をもう一度見つめる。

「僕は象の皮膚に見えるけどね」
「じゃあ、サバンナだよ」

本当はここが動物園でも、セブンイレブンの前でも、サバンナでもいいけれど。

象はサバンナ以外にも生息しているとか薀蓄を垂れる前に雨は止んで、アスファルトはキリンも象も、なかったみたいに平たかった。

君はまだビニール傘を開いたまま。


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特に意味のない文章。
ただぴこぴこ打ちたかっただけ。
お仕事はそれなりに順調です
部屋は壊滅しているけれど。

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